三者自立の信託経営 2010年12月1日(水)
社会課題を解決する。両備ホールディングスの小嶋社長は、「人を運ぶ」という自社のドメインの中で、行政と民間の責任分担を明らかにして、地方のバス、鉄道、フェリーなどの企業の再生に取り組まれています。
ザ・リッツ・カールトンホテルはホテルの建物や設備というハードをパートナーである企業に提供してもらい、オペレーションのみを業容としている。小嶋社長の経営の仕方もこれに似ている。行政にフェリーや建物、港の整備を任せ、民間である自分たちはオペレーションを担う。
そして、赤字会社数十社の社長を引き受けている小嶋社長は、ここでも責任分担している。現場の責任者に権限委譲をしてオペレーションをすべて任せ、自分は経営数字をしっかり見る。実に合理的な経営をされている。しかも、赤字の間はそれらの会社から社長としての給料はもらわず、無報酬。それが信託経営。
地方の赤字路線を引き受け、再生していく事業を引き受ける背景には、ある出会いがある。 岡山藩の財政立て直しに、児島湾の干拓をし、干拓した農民がその土地を自分のものとし農作物をつくれば豊かになるというアイディアを、自分名義で何万両という借金をして実現させた、津田永忠との出会い。社会のために、人々のために自分が何が出来るかを考え行動する人になりたい−。
ただ、交通機関の赤字路線の建て直しをどれも引き受けるわけではありません。そこにはとても重要な要素が一つあります。 それは、利用者。「どうしても必要だから、自分たちの手で守りたい」という熱意や実際に利用者が自分たちで行動を始めているところに限ります。黒字化への成功要因は、三者自立。行政、民間の経営者、そして利用者。それぞれが信託経営を担っていくことなんだろうな。
●両備ホールディングスURL:http://www.ryobi-holdings.jp/
「よろこんでもらう」を確認 2010年11月18日(木)
☆じぶん ☆取引先と ☆お客様と ☆社会と
と仲間 関係者 その周辺 歴史
これ、糸井重里さんの、「よろこんでもらう」を確かめるモノサシ。
会議の時に議論が空中遊泳していないか、磁石の代わりにどこに引力があるのか、つまり、みんなの考えてることが合ってるかをこのモノサシで確認するのだそうです。
OKであれば☆を黒く塗りつぶす。並んだ星が
★★★★の仕事なら、「頑張ってやるべき」
★★★☆の場合は、「まだ検討したいところ」
★★☆★だと「長続きしないと思われる」
☆★★★は、「うまくいきません」
ふむ、ふむ。このモノサシで「ほぼ日手帳」や「ハラマキ」や新しい企画・商品ができあがってるんですねー。効果アリってことです。
そして、これ、近江商人の「三方良し」より進化したモノサシですね。あれは、売り手、買い手、世間の3つですから。
このモノサシは企業に関わるすべてのステークホルダーが入ってる。一つだけ私が異質な感じを受けるのが「歴史」。これだけ、「ヒト」ではないんですよね。ん? 「歴史は人がつくる」んだから、これも「ヒト」ですね。時間感覚というより伝統とか文化の意味合いなのかも。
うちの会社が定義しているステークホルダーと見比べてみる。「地球環境」は「社会」に入るだろうし。て、地球環境って、「ヒト」じゃないし。「株主」は「関係者」。うん、このモノサシ網羅できてる。
コストや品質がこのモノサシに直接入ってないのがいいですね。「よろこんでもらう」ためのモノサシだから♪ 「役に立つか」って言い換えてもいいかも。
そうだ、私が自分自身の仕事を決めてる時はどうだろう。
確認事項は、1つかも。それは、「相手」。時々、「じぶん」を無視することがあるので、この糸井さんのモノサシ、組み合わせが深いなぁと思う。
んで、私が所属しているのは本社部門だから、モノサシを置き変えてみよう。
従業員をお客様とすると、
☆じぶんと仲間
☆他部門と関係者
☆従業員とその周辺
☆社会と○○
かな。んー、「○○」はどうしようかなぁ。
トレードオフではなくすべてを満たす、かぁ。
誰に「よろこんでもらう」のか。そこが重要ですね。
ユニクロ「服のチカラ」 2010年11月15日(月)CSR。企業の社会的責任。
その意味するところは多様。社会貢献、地球環境配慮、ダイバーシティ、CSR調達、コンプライアンス・・・。 そして、企業によって力のいれどころは結構違う。その違いは、というか、地に足が着いた継続的な取り組みをしている企業の多くには特徴がある。一つは、事業活動において高い倫理観を持って社会的責任を果たしていること。そして、もう一つ。自社の技術や商品・サービスといった事業を活かした活動であること。こちらが本質的なCSRだと私は考えています。
先日、ユニクロのバングラディシュでのソーシャルビジネスの取り組みを知り、まさに事業を活かした取り組みをされているのに驚きました。あのマイクロファイナンスでノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行と提携し、9月に現地向け衣料品を企画・生産・販売する会社を合弁で設立しています。
バングラディシュは、1日1.25ドル以下で生活している人の割合が4割弱。現地ユニクロで作られた衣料品は1ドル程度で販売します。グラミン銀行の持つのネットワークを活用し、職業訓練、服の対面販売という雇用創出を行ない、貧困という社会課題を解決する。バングラディシュは1億人のマーケットがあるし、ここでの生産クオリティをあげていくことができたら、いずれはグローバルマーケットに通用する、中国に続く一大生産拠点になるのかもしれません。それは意外に近い将来なのかも。
ユニクロの会社情報のトップにある「ユニクロについて」にはこう書かれています。
「ユニクロは、あらゆる人が良いカジュアルを着られるようにする新しい日本の企業です」
バングラディシュでもこのユニクロの価値そのままを追求する社会課題解決に取り組まれていることに、強い一貫性を感じます。自社の提供する価値、つまり「服のチカラ」を信じて社会課題解決に取り組むユニクロ。
JQAの4つの基本理念、「顧客本位」「独自能力」「社員重視」「社会との調和」。
結局はこれらがすべてできている企業が卓越した質の高い経営をしているってことなんですよね。
●ユニクロCSRコミュニケーション「服のチカラ」Vol.05/2010年10月発行
ソーシャルビジネスってなんだろう
URL:http://www.fastretailing.com/jp/csr/clothes_p/ebook5/
思い出を創るプロ 2010年11月8日(月)
10年ほど前、フロリダで行われたイベントでの出来事。
最終日の夜、パーティを行なうからと急遽主催者側から連絡を受け、宿泊しているホテルから参加者全員がバスに乗りこんだ。パーティ会場まで、森を抜け湖を眺めながらバスに揺られていると、前方に炎のようなものが見えてきた。
運転手は、バスを降りて近くにいた村人に話を聞きにいく。行く手を遮るようにさらに炎は勢いよく燃えて、大声を出して走っていく村人、どこからか銃声も聞こえてくる・・・。
運転手はバスに戻ると、「申しわけありませんが、全員バスを降りていただけますか」という。
消防車がサイレンを鳴らして到着し、消防士は燃え盛る炎に向けて駆け出す。ニワトリや家畜は逃げ出している。さらには逃げ惑う人々の助けを呼ぶ声や怒声が飛び交い騒然としている。
「どうしたんだ」
「だいじょうぶなのか」
「パーティどころじゃないぞ」
バスを降りた人びとの不安が最高潮に達したころ、騒ぎ回っていた村人たちが、テーブルを出し、クロスをかけ、料理を並べはじめた。
消防士や村人たちは、いつのまにか楽器を抱え、音楽があたりに響きはじめた・・・。
It's a party time!
さて、こんな粋な演出、どんな企業ならできると思いますか?
フロリダにヒントがあるかも。
米国企業、そうですね。あたりです。
お客様を驚かせ、楽しませるってことは、感動を創る企業?
しかも、10年経ってもなお色褪せない思い出となっている。
では、ヒントの大サービスです。
ランプシェード・トーキングといえば?
そう、これは糸井重里さんが体験したディズニーのパーティだったのです。
おおよそ上記のようなエピソードを読んだ時、流石ディズニー、「思い出を創る」にかけては世界一かも、と感動しました。自分たちの使命と存在価値を知っている会社って、何をやるにしても一貫性があるんですよね。そしてそれを全員がそれぞれの役割を認識して実現しようとする。いい会社には価値観が根付いているものです。
第一議題 2010年10月25日(月)経営トップが集まる経営会議の第一議題。
- 売上やノルマ達成率
- お客様のクレームや満足度、返品率
- ビジョン実現に向けた活動の進捗確認
- 地域社会への貢献
- 地球環境配慮
- 従業員のモチベーション
- 突然起きた諸問題
- 新製品開発進捗
など、いろいろあります。
その企業が大切にするものが会議の第一議題になる。
従業員の働きがいが重要だと思えば、「6」が会議の冒頭に話し合われるはず。お客様第一といいながら、「1」が冒頭に話し合われていたら、お客様第一ではなく売上至上主義。そういうことって、誰かが声をあげなければ、「うちって結局、売上なんだよね」とドミナントロジック化(組織の支配的論理)していく。
小さな組織、たとえば、部門やチーム内の定例会議にしても、上記は当てはまります。
会社の価値観をグローバルに伝えていこうとしている部門で、自分たちのコミットメントに対する活動やの実践度合いを話し合われていなければ、「重視している」状態とはいえない。また、議題として設定されていても、他の議題が優先され、次回に繰り越されていったら、「重要じゃないんだ」と全員が思い始める。
本当に重要であれば、「必ずやる」。第一議題に持ってくるか、「では、最後にコミットメントをレビューして終わりにしましょう」と軽くできるようにやり方を変えるかです。
最初に持ってくるのが一番意識を高めるのに効果的ですが、最後に持ってきたとしても「必ずやることだ」という意図がメンバーに伝われば、それが重視されていることに共感できます。「大切だと思うことを大切にすること」。会議の場でも実践することでメンバーの行動が変わります。ドミナントロジック化させず、「大切なことを大切だ」と言い、組織を活性化させていくのが気づいた人の役割なんだと思います。
あなたの組織の第一議題はなんですか?
思考がプロダクトアウト 2010年10月21日(月)
昨日の名古屋pipiで物産展の価値を考えたつもりでしたが、すごく企業寄りでプロダクトアウトな発想をしていた自分に気づいた。うぅ、反省。
テレビを買ったら「番組が見られる」というのは機能であって価値ではない。いろいろあえるけど、たとえば「家族で映像を楽しむ」だったりする。
では、物産展で商品を買う人たちの価値とは。
- 新鮮な北海道の食材を味わう
- 北海道に行った気分を味わう
- 北海道で有名な/知る人ぞ知るお店の味を楽しむ
- 懐かしい故郷の味を楽しむ
- 普段とは違う買い物を楽しむ
といったことでしょうか。そうするとどういう店の並べ方がいいか、出店の演出も変わってくる。仕入れるものも変わってくる。たとえば、「北海道に行った気分を味わう」だったら、相変わらずの商品置くだけの暖簾店舗ではなくて、フロア全体をミニチュア北海道にする、とか。
お客様から見た価値を考えていくと、見えてくるものが変わる。そしてそれはプロダクトアウトよりもずっと魅力的なものになる。そういう意思って、お客様に伝わる。そしてそのイベントは人気が出る、そして、たくさんの商品が売れる、従業員もさらにやる気になる、そういうデパートは品揃え(商品構成)が信用され、お客様が沢山集まる。相乗効果高そうです。
プロダクトアウト(自分サイド)で思考するのではなく、マーケットイン(相手サイド)で思考する。そこの違いで独自性が決まってくるんですよね。魅力的な人や組織って、いつでも相手の目線に立っているものです。
プチプチの用途を広げる 2010年10月18日(月)
プチプチ。それは梱包用に使う、あれですよ。必ず手にすると、つぶしたくなる。そしてそれは、「無限プチプチ」というおもちゃにまで用途を広げてます。
最近では、プチプチ部分が、ミッキー形やハート形、色もバリエーションが増えています。「梱包」から「包装」へ、そして「おもちゃ」。こんなにプチプチに用途があるとは。と思ってたら、被災地で使う寝袋まで! 「クッション性が高い」「包むもの保護できる」「つぶしたくなる」と、プチプチの特性をうまく活かしてます。
梱包では、アルミ箔を接着した保温・保冷用途、ダンボールに接着して強度を高めたもの、貼り付けて使うもの、接着剤がついていて、使う人のアイディア次第では何にでも使えるもの。「包装」では、ハートのプチプチで、バレンタインデーだって使えちゃう。
ビンを包むのにも中身が透けて見えて綺麗、しかも保護できる。
では、どうして、このような特性を活かして用途を広げる必要があったのか。それは、社会全体の地球環境配慮への意識の高まり。プチプチの素材、ポリエチレンは燃やせば水蒸気と二酸化炭素に分解され、有害物質は発生しないのですが、発泡スチロールの緩衝材などもダンボールが幅広く使われるようになったことが一つの要因と思います。
また、これらの用途開発には、若い女性の取締役が一役買っています。取締役 兼「プチプチ文化研究所」所長 兼 広報 兼 プチプチの歌「プチプチなのなの」を歌うバンド「プチメタル」のボーカルの杉山さん。社長の新しいアイディアを否定する役員たち。そんな社長の強い味方でもあります。
杉山さんは、「WEBサイト作らせてください」と入社。2001年にネット上に「プチプチショップ」を開設。「少しだけほしい個人のニーズがある」ことを社長に提案し、多くのお客様の支持を得ます。
暇つぶし専用の「プッチンスカット」も開発。ちなみにこの商品、チリの鉱山で閉じ込められた方たちにも送られたそうです。
「プチプチ文化研究所」は社長と2人で設立。プチプチの意外な使われ方を探り、いまでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とは、太陽電池パネルの芯にプチプチを使う研究を進めているそうです。
お客様と企業をつなげる従業員を活用し、プチプチの新しい用途を広げている、この会社。どこかというと、名古屋に本社を置く「川上産業」さん。気泡シート(登録商標プチプチ)では日本国内シェア50%です。プチプチで作ったipadのケースもありますよ〜。
●川上産業サイトURL:http://www.putiputi.co.jp/
“誇り”を共通語に 2010年10月14日(木)
【誇り】ほこること。名誉に思うこと。(by三省堂 大辞林 第二版)
この“誇り”について、中国の新人から質問があったと、研修講師を担当した仲間から、チームメンバー全員に、「あなたならどう答えますか」と問いかけがあり、話し合いが行われました。
そもそも、“誇り”って何だろう。
中国語の“誇り”って、“自豪”と書きます。自ら“すごい”と思えること。自分自身に対するものが“誇り”であって、誰かから与えられるものではないってことです。
んでは、日本語の“誇り”って?
漢字の成り立ちから考えると、いったいどうなんだろう?
偏の「言」は、中国語でも、日本語でも、言葉で人に何かを伝える動作に使われる。そして、旁の「夸」は、中国語では「褒める」という意味。
てことは、「人から“すごいね”って言われる」という意味ですよね。「誇り」=「自慢」ではないことがわかります。自分で“すごい”と思ったり、結果的に「誰かから褒められる」という客観的な評価につながれば、自分自身に対して“誇り”がもてる。“誇り”は自分が感じるものであって、人「に」対して与えるものではない。
中国語と日本語の共通項が見つかり、チーム全員で「へぇ〜×20」。中国の仲間にも「誇り」を共通語として自信を持って伝えられるし、日本の仲間にももちろんこの掘り下げ、使える♪
言葉を掘り下げて話し合うことで、共通の認識と共感が生まれます。実際、今日のチームミーティングは研修講師の投げかけから、うちの会社が大切にする言葉の共通化が一歩進んだのを実感しました。自分たちの言葉に置き換えていく作業というのは、とても大切ですね。
Attentionではない市場の始まり 2010年9月27日(月)
さとなおさんが、「AIDMA → AISAS の次は、「SIPS」かな」というコラムで、今まではAttentionから始まっていた消費者の行動が、もはや共感を呼ばないものになってきているということを示唆されている。
そうなると、アーリーアダプターの人たちというのも、これからはもっと多様で不連続な出現方法なのか、いなくなるのか? WEBが発達していくと、市場は「ロングテール」化していき、そこを狙っていくべき、という説も一時期流行りましたね。WEBが発達、ではなく、まさに、ソーシャルメディアが発達していく、ということなんでしょう。
そうなると、爆発的なヒットというのは望めなくなってくる。自分の知り合い、自分が尊敬する人が紹介するものを買う人々・・・。そこで、twitterやfacebookやmixiがこれからさらに有力なマーケティングツールになるのかも。
ただ、先進国の市場は確かにそういう流れかもしれないけど、中国やインドといったこれからの市場ではどうなんだろう。それに日本って、なんだかんだいって、同質化を求めたり、マスコミに踊らされる傾向があるから、まだまだマスでの狙い目はある気がする。
こないだtwitterのマーケティング事例で、三重県の「もち小麦」が取り上げられていました。「もちこむぎ、知っていますか?」とつぶやいただけで、リツイートされ、どんどん情報が広まり、全国から注文を受けるようになったそう。この「もちこむぎ、知っていますか?」という何気ないひと言がまさに「共感」を呼ぶ。だって、「うちの開発したもち小麦、こーんなに○○で、△△しちゃうんです」みたいのだったら、「あぁ、自社製品宣伝しているんだな」で終わってしまう。
瞬時に大ブレイクして終わる、という打ち上げ花火タイプではなく、じわじわ広まっていき、売れていく線香花火タイプなのかも。でも、じわじわ広まったものは、本当に価値あるものであれば、細く長く売れ続ける可能性があるのかも。そうなると蚊取り線香タイプって感じだろうか。
twitter見て買ったもの、ってこれまでにないけど、紹介してもらったお店は行ったことがある。フォローした時点で、自分でその人を選んでる。受け入れている。自分が選んだ人の日々のつぶやきはやっぱり興味を持って読む。逆にそのつぶやきが共感できなければ読まなくなり、フォローを外していく。そうやってネットワークを選択してる。
んでも、twitterだっていつまで流行るかわかんない。ネットワークは一旦広がったけどこれからはある意味、閉じていくかもしれない。いずれにしても、人々の共感を得たものだけが市場を細く長く捉え、成功していく。ドラッカーの言うように、企業の目的は顧客を創造すること。それだけは変わらないのだ。そしてその根源にあるのは「信頼」というキーワードなのだ。
誇りを感じる製品・サービス 2010年9月21日(火)テレビ東京の番組「ルビコンの決断」の最終回で、東海メディカルプロダクツ
の筒井社長が登場されていました。
4年前にこのコラムでも紹介した時は、情報ソースはドラマだったので、「経営」という内容はほとんどありませんでした。先日の放映を見て、親と経営者という2つの大きな役割の狭間に立った、筒井社長の思いに触れました。
世界初の心臓バルーンカテーテルという製品は、心臓病で苦しむ多くの患者さんを救うものです。
「企業は社会の公器である」(by 松下幸之助翁)
モノやサービスには、「実用品/生活必需品」と「嗜好品」があって、どちらが社会の役に立つかという問いには、「実用品/生活必需品」の方に軍配があがる、という答えしかありません。
それがなくなったら人々の生活が維持できなくなる度合いが高いものほどお役立ち度は高い。ビールは嗜好品だけど、それがないと生きていけない人がいる? ま、それは置いといて・・・。
中でも、沢山の人の命や障がいを助けることができるモノを作るというのは、社長も従業員も使命感をもって取り組むことができ、誇りを得やすい。中村ブレイスだってそう。
「社会に役立っている」と実感できるモノやサービスを提供することは、自分たちで「価値」を改めて考えなくていい。それを使うことでお客様は「幸せ」や「喜び」を必ず感じるから。でも、電球だったらどうか。松下幸之助翁のように物語を語らなければならなくなる。それは、蝋燭、ランタン、蛍光灯、LED、他にも代替手段があるから。
その製品サービス以外に代替ができなくて、お客様を幸せにするもの。そういうモノ・コトが提供できたら、従業員の誇りにつながるのでしょうね。そういうモノ・コトだからこそ、お客様に買っていただくことができ、売上・利益があがり、従業員が雇用でき、家族が安心して暮らせる。「社会に役立つ」価値を提供し続けることができていれば、デフレの世の中になったとしても、この循環は消えることがない。換言すれば、ブルーオーシャン戦略がとれているってわけで。
とここまで書いたものの、じゃぁ、自分たちが提供する製品・サービス以外には誇りを感じることはできないのか。
もしそうだったら、「なくてはならないモノ・サービス」ではないモノ・サービスを創っている会社の従業員は誇りを感じにくいのか。
世界中にはいろんな企業があって、成り立ちは様々で、いろんな人が働いている。私はいいチームでいい仕事ができたとき、誇りを感じます。歴史を感じる時、誇りを感じます。売上高はどうかな。従業員数はどうかな。グローバルでビジネスをしていることはどうかな。あ、広がりすぎたので、収束します。
どんな価値を提供しているとしても、事業が成り立っている限り、誰かの役に立っている。そのことを従業員全員で意識することが誇りにつながっていく一番大切な道筋なんだと思う。
真北を向け 2010年9月8日(水)世界で初めてオートキャンプのスタイルを提案した、新潟県燕三条にあるスノーピークさん。山井社長の講演で、志・ミッションの大切さを改めて感じました。
一番大事なのは、志・ミッション。
それはコンパスの「真北」。「北の方角はどっちか?」ではない。一度ずれてもダメ。そして、スノーピークにおける「真北」とは、お客様の笑顔。
お客様が怒ったり失望していたら、真北を向いていないということ。シンプルだがついつい忘れることでもある。
そうならないように創業の精神を言葉にしてミッションステートメントとして経営の中心においている。このステートメントは、お客様、取引先に公表し、こういう理念で運営している会社であることを知っていただいている。
もちろん社内での浸透は他社より一生懸命やっていると自負している。だから、
社長のために働いているやつはいないが、ミッションに向けて働いているやつばかりだ(笑)。
スノーピークの“The SnowPeak Way”と名づけられたミッションステートメント作成は全員参加。1991年、山井社長が書いたミッションに基づき、個々人がの自分のミッションと部門のミッションを書いた。それらを集めて各部門のミッションステートメントを作り、会社としてのミッションに集約している。 ミッションを飾り物にしないための有効な方法の一つですね。同社の「組織紹介」ページには部門ごとのミッションが掲載されてて、ミッションに基づいた行動を意識されているのが窺えます。管理部の「スノーピークの目指すべき道を定める。」っていうのをはじめ、カッコイイです。
ミッションを定め、市場・お客様を選び、自分たちが心から欲しいものを世界初で作り続けてブランドを確立し、成長してきましたが、2000年ごろ業績が低迷します。
業界にはそれまでなかった永久保証制度を取り入れ、製品単価は高いものの、お客様にスノーピークを選んでいただけていると自負していましたが、そうではないことをお客様から教えられます。それが今でも毎年続いているキャンプイベントの始まりです。「真北」を向いているのか、社長をはじめ全従業員が参加し、お客様の声を聴き、再び成長路線に戻したのです。
今、スノーピークは海外のメーカーがその製品やコンセプトをフォローしようとするほどのアウトドア界のリーディングカンパニーです。山井社長は、「当時の規模からすると高い目標を掲げたけれど、1991年にこのミッションがなかったら、いまのような会社にはなっていないと自信を持って言える」とミッションの重要性を語っていらっしゃったのが印象的でした。
そして、これから先のスノーピークは、お客様とともにあって、「自然指向のライフスタイル」を提案し、実現するリーディングカンパニーを目指すのです。
●スノーピーク サイトURL: http://www.snowpeak.co.jp/
トヨタのリコール 2010年8月27日(金)昨日、トヨタ自動車が、また北米地域で販売した車のリコール。しかもエンジンを制御する電子基板がひび割れてエンジンが止まる恐れがあるというトラブル。車種はカローラで、対象となるのは2005〜2008年型の約136万台。
2010年なのに、いまさら? というのと、米高速道路交通安全局が本格調査に乗り出したと発表した途端のリコールというのもなんだか後手後手な印象を受けます。自社だったらどうするか、というのも考えないでもありませんが。
このトラブルでの被害は報告は3件。136万台分の3。そして、この北米仕様のカローラと同じ機構を使って生産していたGMのポンティアック19万9千台もリコール対象になったのだそう。
GMにも影響することからなかなかリコールに踏み切れなかったのか。経年劣化は当然と対応しなかったのか・・・。エンジンに関るトラブルは命に関る問題ですから一消費者としても怖いです。
トヨタは日本を代表する企業なだけに、Made in Japan のブランドも考えなければならないのではないかなと傍から見ていて思う。日本でリストラされた電気機器メーカーの現場管理職は韓国やタイの企業から引っ張りだこ。そういう人たちが各地で技術や品質を高めている。もはや韓国企業は「日本に学ぶところはない」と言っています。
そして、米国市場や日本市場は、Made in Chinaの商品で席巻されています。
日本企業の生き残る術は、“Quality”という自分たちの強みを維持、向上させ、「安くて品質の良いもの」の追求をするのではなく、お客様にとって価値あるもの、究極には宣伝しなくてもお客様が欲しいと思ってくださるものを適切な価格で販売していかなければならないのだと思います。まぁ、正論だけではなんともならないかもしれませんが、これまで築いてきたMade in Japan というブランドは、小さなことの積み重ねの上に成り立っていて、失うのは一瞬なんだろうなと感じています。
浸透の鍵 2010年8月18日(水)
企業理念・ビジョン・ミッション、そしてコンプライアンス・安全衛生・就業規則などのルール・・・。本社から「浸透しろ」とトップダウンで受け止めざるを得ない、グループ会社も含めた各組織。
「浸透度の数値を向上したいの? 強制すればいいよ。毎日唱和する、とか。そうすれば必ず数値は上がるよ。ただ、従業員満足は確実に下がるけどね」
数値を向上することは「目的」ではありません。たとえば、経営理念に基づいて従業員が判断・行動し、誇りも含めた成果を上げ続けていくことが「目的」です。
ただ、受け止める側としては、本社から様々な命令が下りてきて、「強制」と言われたものから進めていきます。たとえば、「安全衛生のe-learningは全員受講」と言われれば、至上命令のように足並みを揃えてソツなくこなしてしまいます。でもそれで本当に行動できるかというと疑問が残ります。
結局は、人の心の問題にかかわる。業務時間の中で、成果を上げることに加え、目の前の仕事には直接必要ないことをやらされる。「やらされる」と思うのは、「必要がない」と本人が判断しているからです。
「目の前の仕事に必要」と本人が思えば、誰だってすぐやります。「将来役に立つ」、と誰かに言われてもやらされ感はぬぐえません。
「いま」「何故これが必要なのか」
つまり、必然性を明確に伝えられることが、浸透において重要な鍵となるのだと今日改めて思いました。浸透に限らず、何かの活動を推進していくにおいても同じです。だから少なくとも部門長にそれをきっちり伝え合意がされたら、自ずと部門長の意識・発言・行動が変わり、その組織内に徐々に浸透していくのだろうな。
「いま」「何故これが必要なのか」を考えていただく、というプロセスを初年度行ったことは良かったとは思うものの、「まぁ、大事だよね」という程度で、会社全体の方向性として全員に腑に落ちていたかというとそうでもなかったのかも。
何人かの方との対話を通して気づいたこの浸透の鍵、うまく活用して推進の力にしたいと考えています。
目指すは「さるとびサスケ」集団 2010年8月8日(日)
「京都経営フォーラム」でのバグジー久保社長のお話続編です。
「さるとびサスケ」という忍者、ご存知ですか? て、今存在しませんけど。この「さるとびサスケ」は、絶対死なないスゴイ忍者だといわれていました。しかし、実は「さるとびサスケ」は一人じゃなかった。「さるとびサスケ」という技ができる集団の名前だった(!)のです。
忍者として高い能力を持ち、切っても切っても次から次へと現れる。だから、死なない、と思われていた。フツー「甲賀衆」とか言われるはずだけど、それだけ均質な能力であったがために一人だと思いこまれたのでしょう。服部半蔵、みたいなスターはいらない。こないだご紹介した「劇団四季」と同じですね。
で、久保社長はそういう集団を創りたいのだそうです。そのために、「お客様のためならなんだってしてもいい」という評価基準に加え、人材育成に力を入れています。
- 教育センターで、営業中に勉強可能
しかも、美容院には珍しい週休2日制の上に!
- キャリアパスプランを毎年作成
しかも全員で共有するから、周りの皆がサポートできる。
- 良い生活習慣をつける
- 躾
- キャンプ、運動会などのイベント強制参加:
休むと解雇。集団で活動することでチームワーク醸成、仕事と遊びの境界をなくすためのしかけ。
- 親孝行休暇&プレゼント購入:
親孝行できる人が自分もお客様も幸せに出来る
- 読書: 課題図書のレポートを書く。良いものに触れる。
- 労働時間の短縮: 弱者を守ると同時に、相手を思いやる気持ちを養う。長期間勤務してきた人を大切にしたい。10年働いたら17時に退勤、15年は日曜休みにする、など。女性が多い職場だからこその取り組み。
- 感謝(“ありがとう”が言えるしくみ)
- 現場で起きる簡単な問題はすぐ解決する
たとえばクーラー故障の修理など。
- 給料袋に支店長が手書きの手紙を入れる。給料をもらった従業員は社長に「お給料ありがとうメール」を送る。
その根底には、「従業員の皆に幸せになって欲しい」という久保社長の思いがある。人生は交わる人で変わる。生活習慣の良い人は成長する。バグジーを「さるとびサスケ」の集まりにし、絶え間なく改革していきたい−
美容師は平均10年で独立していくし、久保社長の今回の役職変更と選出方法や労働時間の短縮に異論を持つ中堅スタッフが辞めていく中であっても、久保社長の思いや価値観に共感し、バグジーを支えていく人がどんどん育っています。
そんな久保社長が感動された、今年入社の21歳の従業員からの給料ありがとうメールをご紹介して今日のコラムを終わります。
当たり前にしている仕事が有り難く感じ、当たり前に頂いているお給料に有り難たさを感じたお話しです。
小児ガンの男の子が「大きくなったら、おまわりさんになりたい」と夢を見る。
「お花屋さんになりたい」と夢見ていた少女が交通事故にあう。
皆を喜ばせることが出来ず、大人になれずに亡くなる子供たちがいる。
働いて生活することを大人の「義務」と考えている人は、仕事ができる幸せに気づいてないと思います。
仲間って、素晴らしい。
仕事って、素晴らしい。
人生って、素晴らしい。
すべて、有り難い!!
★上記は要旨です。全文は、バグログ(BAGZYのブログ)にあります→http://bagzy.exblog.jp/11531234/
舞台だけで食える劇団に 2010年7月29日(木)そう考えたのは、劇団四季 浅利 慶太氏。
昨日のディスニーオンアイスの観客の入り具合の寂しさとショーのクオリティを見て、浅利さんのことを思い出した。
「慣れはだめだ」と徹底的に嫌う。そこには毎日入れ替わるお客様がいる。劇団員の自分勝手な味付けをした最高の演技はいらない。99%の正確さと感性が一振りあればいい。スターはいらない。いつでも誰が演じてもその役どころのクオリティの同一性を確保する。つまり、劇全体のクオリティが第一。だから、スターではなく、劇団員一人ひとりの能力を高めることに注力している。
われわれは八百屋ではなく、演劇で食べていく。
舞台だけで劇団員が生活できる経営をする。そう決心してから、広告宣伝にテレビを使う、「これは」と思う劇を日本に持ち込む。そして、人を育て続け、現在は700人の劇団員を擁する。年間公演数は3600回、観客総動員数は311万人。
キャッツの成功以降、各都市に常設シアターを作ったり、それを自分たちで運営し、徹底的なコスト削減をして、利益の出る経営体質を作り上げている。利益は、人を育てることに使う。厳しいオーディションに受かれば、レッスン代もいらないし生活できる収入も得られる。
開演前の大雨。浅利さんは劇団員にこう言う。
30分入場を早める。
きみらは辛いかもしれないけど、お客さんが雨に塗れるよりいいよね。
徹底的に顧客指向なのだ。そして劇団員への深い思いやりもある。
一昨年、「利益をお客さんに返す」と決め、チケットの販売価格を下げた。劇団四季のリピーターは若者が多いからだ。高品質で安く見て欲しい。そして、「家族で見て欲しい」と、演劇にはこれまでなかった子供料金を設定した。
最近は、子供のための「こころの劇場」をシアターに来られない地域に出かけていき上演している。未来のお客様をつくる一環でもある。
日本全土で芝居を楽しんでもらうのが使命だ。
浅利さん、カッコイイ。浅利さんの意志を受け継ぐ次の世代がいれば、きっと劇団四季は最高の演劇集団でいられるのだと思う。
顧客指向の評価基準 2010年7月24日(土)
何を褒めるかでその組織が何を目指しているかがわかる。今日の京都経営フォーラムでバグジーの久保社長が、
「“円”から“人”へ
何を褒めるかが大事なんです」
とおっしゃっていたことが、胸につきささりました。
「お客様が喜ぶことだったら、なんだってやってもいい」とスタッフにいっておきながら、評価基準は前と同じように「売上○○万円」だったら、本気度は伝わらないし、スタッフも「結局は売上あげてなんぼ」の意識のままだったのだと思います。
そして現在行われている「数値」での評価項目は、次の通り。
紹介客数は、スタッフの魅力で来店されているかどうかが分かる指標。久保社長もおっしゃってましたが、女性は評価と人間関係が厳しいのです♪
そして「予約数」についてもスタッフの魅力度合いはわかるのですが、それよりもある効果から重視すべき指標です。
おもてなしの原点は、準備することと、お客様を“憶えている”こと。
差し入れいただいたことや前回の話題のフォローなどの準備ができ、お客様が驚きや感動されるサービスを提供できる。なので、予約を増やす仕掛けとして、予約来店のお客様は料金10%OFF(!いいなぁ)
そして、「スタッフに成長して欲しい」という思いは、入社式での年1回の表彰。
- 無遅刻無欠勤賞
- 縁の下の力持ち賞
- 天使の仕事賞(MVP)
「無遅刻無欠勤賞」は良い生活習慣を大切にしていることがわかるし、「縁の下の力持ち賞」はスタッフ同士がサポートしあう(チームワーク)ことを大切にしていることがわかるし、「天使の仕事賞」はお客様をいかに大切にしているかがわかる。
ちなみに今年の「縁の下の力持ち賞」は、入社したばかりのスタッフが実家に帰ってしまったので、「先輩として、ご両親が経営されている美容室を継げるまで教えたい!」と北九州市から和歌山まで車で迎えにいった人でした。そこまで後輩の育成に本気になれる人材、すごいです。
「天使の仕事賞」は、入社5年目の子。「沖縄が大好きで年2回は行っていた母が病気になり、いけなくなってしまったのよ」というお客様の話を聞き、「是非お母様と一緒にいらしてください」と店にお招きしました。当日は、ハイビスカスなど沖縄の花が店内を彩り、砂20キロが敷き詰められていたそうです。こちらもすんごいですね。「砂その後どうするんだ、そりゃだめだろう」と思ったとしても、久保社長は一切いわないそうです。それを言ったら良いアイディアの芽をつんでしまいますもんね。
さて、評価基準に話を戻します。「数値」のほかにもう一つ。それは「役職」。
今年、フラットな組織にしようと、「経営層、世話人、一般」と3階層にしました。世話人はスタッフによる人気投票。「業績から遠いところで選ぶ」ということをあえてしたのだとおっしゃってました。そういう人が大切だ、というメッセージですね。なので、業績を上げていて世話人に選ばれなかった人の中には辞めていく人もいるのだそうです。これってある意味、価値観をともにできる人だけが残る、という構図になりますよね。
もう一つ、「2013年委員会」(これも人気投票)という「バグジーをもっと良くしていく」ことを考える会を月に1回開催し、モチベーションアップにつなげているとのことでした。
お客様に感動という価値を届け続けるチームになるために、評価基準を「数値」と「役職」の2つから設定している。常に改革をしていくんだ、という久保社長の強い意思を感じました。
自分自身、「何を褒めているのか」を意識しなければ、と思いました。何を指標とするのか、考えます。
組織の使命 2010年7月21日(水)うちの部門の5ヵ年のビジョン。いままさに検討している最中なのですが、その過程で少し違和感があります。そして今日、その違和感は正しいのかもしれない、とある人と話していて思いました。
4年前に新設されたときは組織の使命がハッキリしていました。昨年、組織変更で新たに組み込まれた機能があり、広がった感があります。そして、それまで、「推進」に重心を置き、グループ会社を含め統一感を持たせたい、としてきた活動だったのが、なんか違う方向にいっている、ような気がする。
そう、使命が1つだったはずが、なんだか乱立している感じ。それぞれのグループが一つの組織かのような動きをしていて、シナジーが生まれていないというか、そもそも使命を一つに統合できていなかったように感じる。
そこが明確でないとこでビジョンを創ろうとしても、部門としてコンセンサスが得られない。見ている景色が違う。なんか一つにならない違和感はそこにあるのだと思う。
一方で、ビジョンを考えるプロセスにも少し違和感があります(自分はその議論に参加できないので見当違いかもしれないけど)。各チームがそれぞれのチームのビジョンを持ち寄って考えようとしているように見える。そうではなく、部門として一つの使命を全員が合意して、その使命を果たしていくために何をすべきか、の順に考えたいなって思う。
ビジョンを創る前に、「組織の使命」を明確にすること。そこから始めたいなと思うfoxryoなのでした。
価値はどこにあるか 2010年7月16日(金)
例によって録りためた「カンブリア宮殿」(テレビ東京)から。
企業経営の本来の目的とは、安い原料で最良の製品を作り、社会福祉に貢献するとともに、これに連なる人々が安んじて生活を楽しむためのものでなくてはならない。
経営とは、経営者と従業員が、その職場を通してお互いに信頼、協力、全能力を発揮して社会に貢献する一方、お互いに経済・生活を確保する共同の場でなければならない。
by 亀田製菓 創業者 古泉榮治さん
日本の経営者は、古くから「利より信」を大切にしてきた方が多いと思う。
そして、企業経営を通して社会に貢献していくことも意識されている。
そして、企業が創り出す、モノの価値とは・・・。
人間しかモノを買わない。
人間の心理を研究員一人一人が知る必要がある。
人間に役立たない技術だったら、ないほうがいい。
利他的な商品は風化しない。
by ホンダ創業者 本田宗一郎さん
技術ありきではなく、使う人ありき。カスタマーオリエンテッドなんですね。たとえば、カブは未だにサイズに関しては一切手がつけられないほど、乗る人にとっての使い勝手が研究し尽くされたものなのだそうです。荷台の高さも荷物の上げ下ろしに丁度よく腰に負担もかからない。
企業経営を通して社会に貢献していくというのは、お客様が「これは役に立つ!」と思うモノやサービスを提供することです。そうでなければ、企業経営は続いてはいかない。そうしてきたからこそ、日本の企業は世界に広く受け入れられてきました。
企業の価値、商品の価値。他社と比べるのではなく、自信を持っていまここを見据える時期なんではないだろうか。
シンプルな判断基準 2010年7月10日(土)
店舗の商品の3割は、店長に任せる。店長は商品企画部門との連携で商品を見つけ出し、その店舗ならではの商品を置く。
「任せる」といっても、その商品が売れなければ在庫になりますよね。だから、カクヤスの佐藤社長は判断基準を決めています。それが次の3つ。
- やるべきか
- できるか
- やりたいか
言い換えると、こんな感じ。
- 顧客視点
お客様が望まれているか。
- 経営資源
ヒト、モノ、カネなどのリスクはないか。
- 情熱
店長に「絶対やる」といった思いがあるか。
原点は、顧客視点かどうか、です。
現代版御用聞き、カクヤスだからこそ、こういう判断基準なのですよね。
「デパート、スーパーマーケット、コンビニと、売り場がだんだんお客様に近づいてきた。これからは玄関を押さえたものが流通を制する」
最近では、駅中という「お客様が歩いてる時」っていう売り場が出来てきましたけど、高齢化が進む日本においては、「玄関」って魅力的な売り場です。しかもコンビニより安くて2時間以内にビール1本から無料で届けてくれるっていうんですから。
商圏を1.2キロに設定し、東京23区を網羅しているカクヤス。うちの近くにもあればいいのにな。っていっても、お酒飲まないから、買うのはもっぱらジュース?
●このコラムは、テレビ東京「カンブリア宮殿」の感想です。3月くらいのかな・・・。
ルールとしくみ 2010年6月26日(土)
久しぶりに武蔵野の小山社長のマシンガントークに、圧倒されたfoxryoです。ていうか、本当はマシンガントークに圧倒されたのではなく、従業員の声、外(お客様やフィードバックレポート)からの声を真っ向から受け止め、自ら考え、独自の理論を打ち出し、それに基づき行動され、毎年過去最高益という成果を出し続けている、その自信とリーダーシップ。それに引き換え、「どれがダブルループなんだ?」と、自分で考えもせず、ろばーとに質問している私。いかん、いかん。
さて、「ルールとしくみ」。お客様第一、独自能力、従業員重視、社会から尊敬される会社を目指して継続的に取り組むために、様々な仕掛けがどらえもんのポケットのように出てきます。それらのベースには、お客様第一につながる、この3つの掟(?)がある。
- 成果が出たことをとにかく繰り返す
- 良いことを明確にし、共有する
- やってはいけないことを明確にし、共有する
そう、「ルールが決まっていないと、ゲームはできないよね」という小山社長。野球だって、選手もお客様もルールを知っている。だからこそ「面白い」。そして、「点数のつけ方」(結果指標)で会社のレベルがわかる、とも。
「良いこと」とは、「成果が出た」こと。「やってはいけないこと」とは、「良いこと」。え??? と思ったんですが、この「良いこと」は往々にして、「社員やわが社にとって都合の良いこと」であって、お客様にとって良いことではないのだそうです。
“成果が出たこと”(=お客様が良い評価をしてくださったこと)が、わが社にとって“良いこと”と定め、共有されています。
最初は、フィードバックレポートで指摘された改善領域を埋めていくことに注力していたのですが、それよりも、全員がこの3つを共有し実践する方が会社が良くなる。これが、経営品質向上に13年間取り組み続けてわかったことなのだそうです。
さて、「ルールとしくみ」。
まずはルールから。
- 経営計画書をなくしたら罰金10万円
- 人でなく、コトを叱れ。
- 結果は「数字」で比べる
他人と比べない。本人の前年結果や目標値と比べる
- 良いことは経営トップが強制して皆にやらせる。
同じ価値観にする努力を行う。
- 社員旅行にいかないと給料4%カット。
そこでは、全員浴衣。ユニフォームは一緒なのが当然。
- 環境整備は全員がやる
- 小山社長に意見を述べるには、報告の順序がある。1〜4の順でなければ、意見は言えない。
- 数字
- お客様の声
- ライバル情報
- 取引先情報
- 自分の考え
部門長は2〜4の生情報がないので、アルバイト・パート・社員に聞きにいく。第一線の声は吸い上がるはずがないから聞く。
ここでヒトコト。武蔵野でのルールは「価値観徹底のためにある」、ような気がする。
つぎに「しくみ」
- 仕事の効率向上
環境整備を全員で行う。仕事をやりやすくする環境を整え、備えること。整理は戦略、整備は戦術
- 方針や実行計画の共有
経営計画書の実行計画を全員で創り上げる。交通費、食事なしでも来る。自分たちでやりたいことを考え実行できるから。
また、実行計画の振り返りも全員で行う。計画を考えた人が実行し、チェックする。他人事にならないしくみ。
- 成果を確実に高め続ける仕組み
新しいことをやって成果を上げた人ではなく、マネした人を評価。目的は、成果(お客様にとってよいこと)の拡大。成果が出たことを繰り返す。横展開を強力に推し進めることが差別化へとつながる。マネできたら賞与UP。誰もが「人の真似をしたくない」。でも、本当は、真似というのはレベルが高くないとできない。要はベンチマーキングの強制実行みたいなもの。
- クレーム対応
30分以内が目標。実施率80%をさらにあげるために、ボイスメール→ケータイメール→WEBメールを活用。これで95%。さらに向上させるために5分で対応しないと本人と上司に5分ごとにメールが届く。
- 顧客サービスの均一性確保
新人の仕事に同行するインストラクターを置く。サービスは人によってバラツクもの。プロセスの「見える化」を行い、インストラクターは100回新人に同行する。
- PDCAを回す
理念→ビジョン(長期構想)→方針策定。ここまでが、小山社長の領域。戦略、課題、部・課・個人の実行計画は全従業員の領域。
- 「P」未来対応型問題解決シート作成
作成目的は、「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」を明確にし、同じ方向性を共有する。
- 「P」実行計画書作成
目的・重点方針・目標・評価尺度の決定
- 「D・C」達成状況報告書記入
- 「C」プレアセスメント
よかったこと、悪かったこと、何故できなかったかを洗い出す。前年度の実績から、「難易度が低くて効果は高いもの」を見つけ出し、優先順位づけしていく。
- 「C」レビューシート
プラス・マイナス両面から記入し、上記の発言ルールに従って報告。上手くいっていないものは中止。上手くいっていれば横展開をしていく。
その他、人材育成と社会貢献に関する取り組み。
- 管理職は社長も含め全員毎年7日連続休暇をとる。
部下が育つ。
- 3年で異動
誰かでなければできない仕事は作らない。誰がやってもできる仕事にする。
- 個人面談は毎月10分行う
半期に1時間ではなく、回数の方が大事。コミュニケーションの量を増やす。
- 採用は、遊んでも面白い人を。
一緒に何かやれる人を選ぶ。
- 安全運転講習
営業車の事故を未然防止する。タイムトライを行い、焦らせて実施。
- 障がい者は親子で雇う
などなど、なんだか結局まとまらずじまいな感じですね。
いいなぁと思ったのは、未来対応型問題解決シート。
- 目的(〜でありたい、〜したい)
- 現状(〜が気になる)→未来から見て考える
- 趨勢(〜になりかねない。最悪○○を考える)→危機感の共有
- 要因(私が〜だから)→天元自在で考える
- 方針(私が〜します)
これらを、お客様、ライバル、自組織の3つから捉える。上記のように書き方の語尾を揃えることで考え方が明確になる、というのも武蔵野独自です。
「お客様に信頼・安心していただけるように教えないとだめ。お客様から、“ぞうきんやさん”と呼ばれていてはだめ。“ダスキンさん”でもだめ。たとえば、“伊藤さん”とお客様が社員の名前を呼ぶ。ここまででないと、ブランドではないんですね」 by 小山社長
お客様が高品質と感じるサービスを届け続ける。武蔵野って全員がその共通の目的に向かうルールと仕組みがあり、それをあたかもゲームのようにチーム一体となって実践しているから成果を出し続けているのだ。うん、そう思った。
●これは中部経営品質協議会月例会で小山社長のお話を聴き、考えたことです。
武蔵野サイトURL: http://www.musashino.co.jp/
小山社長のサイト!: http://www.mmm.ne.jp/koyama/
動機が正しければうまくいく 2010年6月14日(火)
「伊那経営フォーラム」2つ目の基調講演。それは、伊那食品工業の塚越会長のお話。
その根底には「利他」の思いが流れている。というか、「利他こそがすべての原点」だとおっしゃっていました。
動機が正しければうまくいく。その動機とは人が幸せになること。「儲かるように」では上手くいかない。今回、塚越会長の口から「野心」という言葉が飛び出したことにオドロくとともに、静かな情熱を感じました。その野心とは、
社員を大事にして、地域社会や文化を大事にしても、経営が成り立つ、ということを証明すること。
ということで、塚越会長の「野心」が実現したのかどうかを勝手に証明してみます。
まずは社員。
どんなに栄えても社員の健康を考えない経営者はニセ者だ。
会社の永続が社員、そして社会の幸せである。売上とは商品が支持された結果。盛り上がるように内部から伸びていくのが本来の姿。
いい会社はかかわるすべての人から「あの会社、いい会社だね」といわれる会社。
社員の幸せの増大は、精神的・経済的な成長へとつながっていく。輝きながら永続していく。そういう会社創りをずっと目指し、取り組んでこられたのです。
こういった考えは、10代後半3年間の闘病生活で「歩けるだけでもうらやましい・・・」を実感された塚越会長ならではなのだと思う。「健康で働ける幸せ」に感謝し、「一生のうち一番長く過ごす会社こそ、人を幸せにできる」と考えている。
塚越会長が伊那食品工業の経営再建を引き受けた時、社員のやる気を100%以上出したいと考えました。でもお金はかけられない。そこで閃いたのが「社員が会社を自分の家のように思ってもらえたらいいのでは」という考えでした。
作業環境を良くしよう。ちょっとでも明るく、ちょっとでも綺麗に、ちょっとでも軽く、ちょっとでも作業を楽に、ちょっとでも温かく、と小さなことから取り組む。労使ではなく、同志だ、と社員に語りかけながら。今では水に直接触れる工程はありません。誰もが安心して仕事ができる環境です。2年に1回の海外旅行は世界の地域文化を学ぶためでもあったりします。
次に地域社会と文化。赤字であった頃は、工場排水で匂いがするなど地域の方にはご迷惑をかけていた。新しく工場を建てられる経営状況になった時、それらを解消し、敷地には20年後を想定して木を植えた。いまでは心地よい木漏れ日を作る。水が美味しいというので、無料で提供、足りないというのでもう1箇所設置、レストランがあったらいいですね、ということでレストランを作り、文化活動ができるホールまで作って開放しています。
さらに、塚越会長が毎年伊那谷の自然を撮影されて発行するカレンダーは、今年9万部を刷って配ったそう。また、大鹿村の歌舞伎を広めるための映画を作ったり。伊那には美しい自然、文化がたくさんある。それらを積極的に発信されています。
社員の方が毎朝30分早く来て敷地内や周辺の清掃、樹木の剪定などをしています。地域の方から「あの時のあの方、おたくの会社の社員だってすぐわかりましたよ。雰囲気が違います」とお褒め戴く・・・。地域社会・文化もバッチリです。
そして、かかわるすべての人に。業界全体で成長していきたいと寒天を相場商品にしないよう原材料の備蓄に取り組んだり、常に寒天の新しい用途を模索し、業界を超えて研究開発しています。
納品業者にコストダウンを求めたことありません。なんてったって売上計画立てません。従業員もお客様も含め、かかわるすべての人に対して、「信じる者」と書いて「儲る」、つまり、伊那食品工業のファンづくりを心掛けてきた。
その結果、48年間、増収増益を続けています。てことで、塚越会長の野心はもう証明されてますよね。そして、「動機が正しければうまくいく」も証明されています。
伊那食品工業は、あの100年カレンダーに象徴されるように、塚越会長の考えを深く理解した社員の皆さんが地域社会やかかわる人のことも考え、遠くをはかり、これからも年輪のような成長を重ねていくのだろうな。
すべては人が創りだす 2010年6月12日(金)
爽やかな青空の下、車を飛ばして「伊那経営フォーラム」へ。日本理化学工業の大山会長、伊那食品工業の塚越会長、お二人の基調講演、そして、人と経営研究所 大久保さんとICPE鬼澤さんの対談。やっぱり聴きに行ってよかったなぁ。
大山会長のお話で心に残ったこと。
- 幸せとは物心両面が整っている状態である
「福祉」という漢字の「しめすへん」は幸せを、つくりは、福は物を、止は心を表すのだそうです。「4つの幸せ」は心の部分。つまり、経済的にも自立した生活が出来ることも必要なんですね。
- 誰にでも世の中に役に立つ才能がある
工場見学に訪れた青山学園の小学生から後日送られてきた感想文
「天の神様は、どんな人にも世の中の役に立つ才能を与えてくださったのだとわかりました。僕も自分の才能を活かして世の中の人の役に立ちたいです」
- 結果を出せるやり方は必ずある
あの子たちに能力がないのではない。あの子たちの才能を活かしたやり方が必ずある。それができないのは自分たちが未熟だということです。
- (村上龍さん命名)ブーメラン効果
ガラスに描けるキットパスの開発には、大学からの支援が。チョーク市場が縮小していく中、事業を継続していくための新商品を作りたい・・・。「あの子達を幸せにしたい」と思って取り組んでいたら、それを知った多くの人からその都度手を差し伸べていただけてきた。
特に4つ目のところを少し補足すると、集中力があるという特徴を持つ彼らがうろうろするのは、理由がある、ということ。「できるよね?」と聞かれた時はちゃんとできるって思って「はい」と返事をしたものの、健常者の職員が見回りに来るたびに、「違うよ、こうやってね」といわれていると、また指摘を受けるんじゃないかと不安でいっぱいに。健常者であってもいやですよね。そして、その子がやれる方法を考え出して教えたら、持ち前の集中力を発揮し、翌日の分まで「もっとやっていいですか」となったエピソードを話してくださいました。できるとわかると安心するんです。そして、ちゃんとできたら褒められる。すると安心してもっとやりたくなる。いまは、「できる」と答えても、本当にできてるのかを最初に見ているそうです。
その子の才能を見つける。そしてそれを活かした方法を考える。大久保さんが、「任せてはいけない人に任せて、やっぱりできなかった、は違うよね」、とおっしゃっていたのはまさにその通りなんですよね・・・。
あ、タイトルから話がそれてるかな。失礼しました。
大山会長が渋沢栄一氏の「経済とは“経世済民”」を引用されていたように、企業の存在意義って、4つの幸せの中の「誰かの役に立つ」を実感できて、経済的自立ができること、なんじゃないかと思ったんですよ。で、「誰かの役に立つ」には、誰かがその子の才能を見つけてその才能を引き出すチャンスをつくって伸ばしていくわけじゃないですか。結局は、人が人を育て、誰かの役に立つ商品やサービスが生まれ、いい会社やいい地域やいい国ができていく。すべては人が作り出している。
となると、「個」と「個」の能力の引き出し度合いがその社会の成熟度を決めていくんですよね。社会は二人からはじまる? 自分の周りにいる人の役に立つことが私に出来ることなんだろうな。
世界一かオンリーワンか 2010年6月11日(金)
・車が売れない
・旅行にいかない
・上を目指さない
最近のワカモノに対してよく使われる台詞です。
でも、本当にそうなのでしょうか。
ワカモノに聞いてみたらその答えはわかるはず。「だって、それよりオモシロイものがあるからさ」
ユニクロやiphoneは売れている、歴女が増える・・・。つまり、いまのワカモノ「が」欲しいいいモノやサービスが提供できていないこと、そして、「こんな人になりたい!」と熱く思えるような、目指したい人がいないってことだと思う。
いやいや、イイモノ創ったって、そもそも日本のマーケットが縮小していくわけだから、パイが減る分、売上だって下がっていくんだ・・・。でもほんとにそうなのでしょうか。市場に出回るお金は「結果」であって、前提条件ではないと思うのです。
では、売れるものってどんなものか。世界一か、オンリーワン、どちらを選ぶべきなんでしょう。未来工業さんは世界一は大手メーカーに譲って、小ロットであってもお客様の要望、スピードに必ず応えるオンリーワンを目指す。
また、世界一の定義ってだけでもいろいろある。早い、安い、品質がいい、大量生産可能、世界中どこへでも届けられる、新技術、多機能・・・。一方で、オンリーワンの定義は他社が絶対真似できない、に尽きる。ある意味、世界一=オンリーワンという可能性もあるわけだけど、「おたくの商品なら買いたい」「おたくの従業員から買いたい」というとこまでいったらすごいのではないだろうか。
こないだ、三重県の「伊勢和紙」メーカーがインクジェットやレーザープリンターの印刷に対応できる和紙の生産に成功したことがテレビで取り上げられていました。和紙は繊維があり太さが均一ではないため、プリンターには不向きな紙です。だからといって諦めたのか。
プリンタ用に試行錯誤を繰り返し、「いまでは世界的に有名な写真家の撮影した写真をわが社のプリンタで印刷して展覧会に展示していただいたりしています。」 和紙の風合いを活かした紙は、まさにオンリーワンです。
いつまでも経営環境や人のせいにしていないで、お客様指向で「オンリーワン」を極めていくことがいまの時代の成功要因です。
●ご参考(伊勢和紙) 詳しくはhttp://www.isewashi.co.jp/を。
世界の行方 2010年5月29日(土)毎年スイスのIMD(経営開発国際研究所)が発表する国別の競争力順位。1位シンガポール(初)、2位香港、3位アメリカ。(全58カ国のランキングはこちら。IMDのサイト)
日本は昨年の17位から27位へ。シンガポール、香港、そして台湾はイキナリ23位から8位浮上。アジア勢の競争力が高まってる。
中国は意外にも20位から18位にちょっとランクアップしただけ。「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基盤」この4つから見た時に、社会基盤で低いのかな。
hideから、中国の工場で連続自殺事件が起きてるときき、教えてもらった日経BPサイト(2010/05/28記事)を読んでみた。世界は、安い労働力を求め次から次へと場所を移してきた。次はベトナム、その次は東欧???
経済のグローバル化の波に流されて結局富める者は富み、貧しいものはさらに窮する。マザーテレサのドキュメンタリーをたまたま今日見た。食べるものに困らなくても、貧困がある。それは孤独と呼ばれていた。資本主義の怖さなのかもしれない。
中国の内陸部では「丹尼斯」というデパートが急成長しているらしい。そこでは日本の食品などが高くてもどんどん売れている。中国は一党が政治経済すべてを統制しているだけで、共産主義ではない。人口を考えれば、中国はこれからどんどん成長していく市場になる。
自殺者が出る工場、急成長するデパート。どちらの経営者も競争力ランクをあげた台湾の方。中国という国の労働力、市場規模を借りての成功。随分前から変わり始めた中国はこれからもっと変わっていくような気がする。外から見た中国と中から見た中国がだんだん一致するようになっていくのかもしれない。これから世界はなにを中心に動いていくのか。経済競争力? 人々の幸福?
特別な産業はない 2010年5月9日(日)JR東日本の副社長であった細谷英二さんは、りそな銀行の会長を引き受けた。“他流試合で通用する人材になれ”と常日頃から部下に言っていたことも一つの理由。
そんな細谷さんが取り組んだ、りそな銀行の再生には、大きく2つの成功要因がある。
一つは戦略。お客様を中小規模と個人に絞り、徹底的に顧客視点でのプロセス改革を行った。そしてもう一つは、リーダーシップ。従業員の認識を変え、モチベーションを高めるための対話を6年半もし続けている。
その根底にあるのは、細谷さんが考える企業のあり方。
お客様密着、地域密着でなければ企業は持続できない。
細谷さんが国鉄時代に関った民営化に際して、一つの会社にせず、分割した理由。それもこの根底にある思いだった。「北海道で乗るお客様は、ほとんど北海道で降りている」
そして、「銀行の常識は非常識」と、社内の反発を共通の認識と小さな成功体験の積み重ねで変えていく。
たとえば、どこの大手銀行もやっている株式の持ち合い。これを解消したこと。社内からは、企業との関係が維持出来ないと反発された。しかし「うちは、中小でNo.1になるんだ」と、頻繁に中小企業のお客様を訪問し、商いに役立つ提案やサポートを営業が行った。大手と同じことをせず、株式の持ち合いをやめた効果の一つとして、リーマンショックの影響を回避できている。
ビジネスモデルの転換に加え、同時に従業員の意識改革を対話を通して行う。細谷さんが従業員に伝えたのは次の3つ。
- 普通の会社にしよう。特別な産業という意識をなくそう
- いいものから謙虚に学び続けよう。サービス業としての自覚をもとう
- 合併前の意識をなくそう
銀行は特別ではない。すべての企業には必ずお客様がいる。そこを起点として銀行を再構築されたのです。お客様を待たせない、接客は立って行う、17時まで営業、個人のお客様への対応でよい事例は表彰する・・・・。
「6年半言い続けている」とおっしゃっていた言葉から覚悟を感じた。
公的資金投入となった過去の反省をして、前に進もう。それを伝える。
三流のリーダーは“カネ”を残す
二流のリーダーは“事業”を残す
一流のリーダーは“人”を残す
りそな銀行では、お客様密着、地域密着を指向する従業員という人が育っていくのだろうな。
1点だけ細谷さんに賛同できなかったとこがありました。国鉄が民営化された要因として、「官は責任の所在が明確ではない」とおっしゃったところ。
私は官であっても、三重県庁さんのように価値提供先である住民をお客様と考えることや、トップや職員の一人ひとりが責任感をもって取り組む環境を整えられている組織はあると思うからです。リーダー次第、といってしまうのは安易だけど、価値提供ではなく、組織を維持していくことが目的となってしまったら官でも民でも破綻していくんだと思う。いかに「自分たちの」顧客と向き合うか。それを常に考える。どんな組織でも原点はそこにあるのだ。
●この内容は、TV東京カンブリア宮殿の2009年末放映のfoxryo感想です。いまさら見ました・・・。
|