高知の四国管財社長 中澤さんから「伊那食品工業の塚越さんの講演があるよ」と紹介いただき、名古屋から弾丸日帰りで行ってきました。高知の皆さんに感謝を込めて講演メモを掲載します。お役に立てれば幸いです。
■みんなが幸せになる会社づくり 伊那食品工業 最高顧問 塚越 寛氏
誰もが幸せ、が基軸
一生はたった一度。この知識が意外とない人が多い。
来世があるように、いっぺん人生が終われば、また次の人生があるように思っているように見える。でも人生は一度きり。
森信三先生の書籍「一日一語」の元旦には、「人間の知識も人生も一度きり。繰り返しが効かない」というのがある。
人は最先端を誇りたがるが、その感覚はおかしい。なぜなら次の時代の人がもっと新しい最先端を創るから。
人生は一度きり、幸せに生きなければ意味がない。
自分がそう思ったのは入院経験。17から20歳の3年間。生きられるかも分からなかった。
誰だって幸せに生きたい。
であれば社員の健康に配慮したい。
3シフトをやめようと決めた。
寒天は装置産業なので3シフトができる。だが、健康を!を考えた。
経営者はテクニックを使いたがる。
誕生日にケーキとか提案に報奨金を、とか。でもその人の幸せを考えたら、健康の方が大切。それが本当の経営者。
例えばC型肝炎にかかった社員の費用を負担。「命に関わるのだからすぐ治しなさい」と治療を受け完治。家が火事になった社員には生活の保証と家の再建の面倒をみた。
会社で出来ることはやろう。だからみんなで頑張ろう。それは染み込む。社員が困ったら会社が責任を持つ。そのためにもお金が必要だからみんな頑張ろう、いい会社にしようとやってきた。
自分の財産を増やそうとする経営者が時々いる。
経済優先で、社員個人の人生を大事にしていない。
うちは20年間会社が嫌で辞めた人はいない。いまは50人の採用に1000人の応募がある。会社のイメージがよい、会社の方針をいいと思う若者が増えた。
会社は人の幸せのためにあるのに会社を大きくするとか株主にいかに応えるかになっている。人類にとって悲しい。自分が会社を大きくしたんだ、M&Aはオレがやったんだ、ではない。
会社は存続してこそ価値がある。永続の手段として年輪のように成長する。干ばつでもわずかでも成長する木々のように。売上・利益より、実質どこかがよくなった、でいい。でこぼこでも成長すればいい。
うちは役員会で目標の話はない。売上も利益も目標はない。役員会では価値観の変化について議論している。
世の中はお金が絶対的と思うが、お金は手段。絶対的な価値は幸せに生きるということ。それが普遍の価値。
科学技術の変化は読めるが、人間の価値観の変化は読めない。これを読むのが経営者の仕事。
例えば社会情勢が変わったり生活が豊かになれば価値観が変わる。
遠きを図る 将来を読む、手を打つこと。
幸せって何? 右肩上がりが幸せ、末広がり。八が幸せの形。
それで社員のモチベーションややる気が高まる。いい会社がいいよね。綺麗だといいよね。みんなで考え、掃除を始める。
福利厚生を良くしてきた。スタッドレスタイヤ、カーポート、1年おきの海外社員旅行。
経営的に苦しい時からやっていた。やると「社長、明日から頑張るね」とよい循環が生まれる。「海外は毎年は無理だけどみんなが頑張れば1年おきならできるかもしれないね」で、みんな頑張る。みんな頑張れば右肩上がりになる。夢や希望が存在する。業績が下がると首になる不安がないのが幸せの形。
公益資本主義という考え方がある。
信頼感が幸せを生む
社員のモチベーションが上がるといいことが起きる。それは笑顔♪ かんてんぱぱガーデンにあるレストランは決算をしていない。多分、決算したら赤字になる。みんなが笑顔になることをしてもらい、お金のことはいわない。
たとえば、ホテルに泊まると「こんな歯ブラシを使ってるんだ。もう500円宿泊料金を上げてもっといいものを使えばいいのに」と思う。
経費を下げれば儲かると勘違いしている。 うちでは「経費は使いなさい」と言っている。
昔は売上をあげ、税金を納めることが国のためになったが、いまや源泉徴収のほかに、自動車、ガソリンなどから税金が納められる。だからお金を使った方が景気が良くなる、ということのために経費を使う。自分たちの経費はよその会社の売上です。
社員にも「経費はどんどん使いなさい」といって、必要な物はどんどん買ってもらっている。高いからとか古いものを使いまわすとかいうことはしない。 「もう経費を使うものがないです」といわれても「もっと工夫して使いなさい!」と言っている。そうしていくと次の年にはもう経費を使うものがなくなって利益になった。経費を節約すると、作業がしにくかったり、生産性が上がらないということが起きる。
うちの工場内には監視カメラもない。工場の外にはある。安全管理のため。
掃除用具や除雪車、軽トラなど、会社の備品は何でも勝手に社員が使っていいことになっている。ちゃんと返せばいい。そうしていると、備品は丁寧に使われているし、ちゃんとみんなで管理できている。
社員を信頼して援助する。信頼感が幸せを生む。
信頼がないとテクニックではない いい形にはならない。遠くをはかるという意味で研究開発にも力をいれている。従業員500人のうち1割の50人が研究開発に取り組んでいる。食品業界ではこれだけ人を投入する会社はない。人が多いといろんな研究ができる。時代の変化が急にやってきても怖くない。こうして種をまく。
研究開発部門というシンクタンクが会社には必要。
世の中の変化を見て手を打つ部門が必要。変化に強くなるし、変化を先取りできた。寒天という素材の研究だけでなく、時代を読んできた。かんてんぱぱガーデンも25年前につくり、いま、会社の新しい在り方と評価されている。
世の中の価値観が変わる。
今は都会で仕事をすることがステイタスだが、田舎の緑あふれるところで仕事をするのがステイタスになるなんてことがおこりうる。
何故東京がいいのか。それも節目で変わる。
「トレンドってどう?」 それよりも人間の幸せを考える。
お互いが思いやる
幸せには、2つある。
ひとつは、右肩上がりであること。 もうひとつは、「"有難う"と言われるように/言うように」と言ってますが、感謝しあえること。有難うと言われるようなことをするのはもちろん、人の行為に素直に「有難う」と言えること。それで人間のコミュニケーションはうまくいく。
右かが上がりに「信じる」に「者」と書いて「儲」ける。漢字はよくできている。
作れば儲かる時代ではなくなった。仕入先、取引先、会社に来るひとたち、一人ひとりが皆さんのファンであること。
ファンを作ることが会社経営の要諦なのです。
その会社はいいことをしているのか、尊敬されているのか。良いものを作り続けているかだけではない。それが安定した経営につながる。
信者づくりをしましょう。
「優秀」という言葉があります。文字通り優しさに秀でた人。思いやりや優しさのある会社、思いやりや優しさのある上司、思いやりや優しさのある社員、そういう人が集まった会社がいい会社。
お互いが思いやることを大事にしている経営
会社をどうすべきか考えるときに、
- どうすれば儲かるのか="How to do" を学ぼうとするが、
- 本来なら、"How to be"=どうあるべきか を学ぶことが重要
経営は誰のためにあるのか、会社は誰のためにあるのか?
公益資本主義。これからの資本主義の在り方。経営のあるべき姿を学んでいる会社は不祥事がない。
忘己利他。これは京セラの稲森さんがよく使う言葉(最澄の教え)。
他人を利するとすべてがうまくいく。40年前に原料調達で海外事業を始めたが現地に任せ、年に1回交流する程度。
相手を信頼し、相手のためになることをする。
それで社員は派遣せず、うまくいっている。技術指導に1週間出張であれば社員も喜んでいく。
一人ひとりが幸せになってこそ、いい国となる。
高知で魚をあげるのは、GDPには表れてこない。長野は山菜がとれたら隣近所に配る。そういうのはGDPに換算されない(笑)。豊かさは数字で表すことができない。信頼して助けあう。それは数字に表せない幸せ。
教育の基本は、人間力。
知識はどうでもいい。人生一度きり。幸せに生きよう。
忘己利他で他人を利することをしよう。
人間の赤ちゃんは、本能で乳を吸う。自分が生きるための原始的な姿。それだけで大人になっている人が多い。
教育とは、人間性を取り戻すこと。
知識を得るのは教育ではない。人間性のはね返りで幸せになる。財産は手段。幸せになるのが目的。
いい言葉も学ぶ。手法を得ることは、学ぶといわない。ただの習得。
迷惑をかけない。これが大切。
親として言い続けることとは、
-
「あなたの人生だから、自由に生きていい。
人様に迷惑をかけることはやっちゃいけない。
そのためには自律しなきゃね。
だから学校に行くんだよ。知識がいるんだよ。」
伊那食品工業の本社に右折して入るのは禁止。それは朝の渋滞をひきおこし地域の方に迷惑がかかるから。社員が自律的にはじめた。
2:6:2の法則。これは種の保存から生まれた比率。
人間は、差別化することで幸せを感じる部分があるが、優秀ではない「2」を切り捨てても、結局2:6:2の比率になる。そういうものだと理解する。
だから全体のレベルを上げることをやればうまくいくのです。
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■満足と幸せを分けて考えよう ネッツトヨタ南国 相談役 横田英毅氏
みんなが幸せになるのが会社のあり方。幸せな働き方をするには、満足と幸せを分けましょう。
嬉しいには、物、金、時間による「満足」と、心や精神による「幸せ」がある。
満足は、欲しいもの WANTS。幸せは、必要なもの
要素で表すと、
・満足:結果、目標、利己、経済
・幸せ:プロセス、目的追及、利他、道徳
たとえば、食べ物を食べるのは「満足」、食べて健康になるのは「幸せ」とすると、「満足」を追いかけ続けると「幸せ」は遠ざかっていくということになる。
満足は、見えるし際限がない。一方、幸せは見えにくく、反復でも効果がある。
満足の損得を横軸、幸せの大小を縦軸にして二軸でみてみる。
労働条件は、損得(満足)、働きがいは幸せ。
働きがいがあるというのは会社に行くのが楽しいという状態。成長している、意見がいえる、評価されるということが感じられる安心・安全な状態。人間関係がよく、コミュニケーションがとれていてチームワークが良い。感謝しあい、貢献できている感覚がある。また、チャレンジを感じることや、全体像(目的・ビジョン)がわかっていることで生まれる。
目標が達成できて得られるのは「満足」。目的を追求することで働きがいや幸せが得られる。
皆さん、先に働きがいを高めることをしませんか。心の幸せを考えましょう。物心両面の豊かさのある環境を作っていきましょう。
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■パネルディスカッション
コーディネーター:ビスタワークス研究所 代表 大原 光秦さん
パネリスト 塚越さん、横田さん、
株式会社ノーベル 代表取締役(土佐経済同友会 特別幹事 木村祐二さん
(注)以下、全文ではありません。
- 大原さん:
- 学ぶ=「何を行動するか」が大事。
幸せの指標は満足度では?と思いがちだが、物やお金で測るのではなく、ましてやエゴ(自利)ではない。自分の問題を自分で解決しないとか、若者におもねるのではなく、互恵が大事ということを伝えている。横田さんのいう「全員を人生の勝利者にする」とは?
- 横田さん:/dt>
- 満足はなくなる。だから幸せと満足を分けて考えよう。幸せは追求すべきもの。
- 塚越さん:
- 会社はつぶれたら大不幸。みんながきちんと仕事をする。「みやましい」(かいがいしく、という伊那の方言)。ハキハキ、力強く、スピーディに。それだけだと思いやりがなくなる。だから社是に「やさしく」がある。
- 大原さん:
- 皆で世の中をよくしよう。三方よし、足るを知る者は富む。今の問題は?
- 塚越さん:
- 教育。日本の戦前の精神は素晴らしい。戦勝国は日本が優れているから怖かった。今はアメリカナイズされ、利他を教える必要がある。イソップ物語は人間教育。今の学校はいい学校に行くための予備校化している。目的を「幸せの本質は何か」に置いた教育のやり方がある。
カギは実作業で学力が落ちていないこと。理解することが大事。
- 大原さん:
- うまくやる、ものを覚えるというのはできている。強く高知で生きるには?
- 横田さん:
- 大変だったけどあれ何だったのかなと。勉強は嫌い。でも遊んだことはよく覚えている。釣りで餌をつけたりする、どうすれば釣れるか。自分の頭でよく考えることが大事。人間力を高めるチャンスを若い世代に与えること。
研修は不要。外部もいかせていない。
- 大原さん:
- いい先輩の行動を見て育つ?
- 塚越さん;
- いい形が伝統になっていく。基本は変わらない。優しさと思いやり。「"有難う"と言われることをすること/言われること」だといつも伝えている。
- 大原さん:
- ギャラップの幸福度ランキングで、フィンランド、ノルウェー、デンマークが上位を占める。日本は54位。回答結果を見ると、上位の国は「幸福とは」という価値観が共有されている。日本は何を大切にするかがあいまいなのでは?
- 横田さん:
- 自分たちの地域を一番大切にすることが大事。人の心が作るバリアフリーを考える。
- 大原さん:
- 内部崩壊しないため、幸福のために実行することは?
- 横田さん:
- 上位の国はキリスト教国が多い。子供のころ、日曜礼拝で聞く牧師さんの話は正しいけれど、大人は言っていることとやっていることが違うなと思っていた。人は何を正しいか知っていてもやらない。会社の理念があっても日々やっていることが違う。どう解決する?を考えること。
- 木村さん:
- 自分たちがどうやったら幸福になるだろうと考えること。
- 塚越さん:
- 人間が生を受けて、一回の人生という認識を持ち、いかに幸せに生きるかを真剣に考えること。利他をすると幸せになれる。周りから感謝されることで、利他に戻る。
人のためになれるか、それを得る過程が教育であり、成長。子供には、「ああしろこうしろ」ではなく、勝手に生きればいい。「人の役に立つ人生を送りなさい」と言うだけでいい。利他をどれだけできるかが幸せな人生につながっていく。
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■高知 食べある記
家を朝7:10に出て、岡山で新幹線から南風号に乗り換え、瀬戸大橋、大歩危・小歩危(おおぼけ・こぼけ)と風光明媚な観光名所を通り過ぎ、高知に着いたのは12:29。あんぱんまんが迎えてくれましたw
foxryoは南風号がお気に入り。どうしてかというと、まず、超高い場所によくぞ鉄道を通してくれた、と思うから。もう一つは、その高い場所から、まるでスイスのように山々の中に点々と民家があり、かつこの季節は新緑からもう少し緑が濃くなった山と吉野川の峡谷を眺めることにワクワクするから。ただ、電車の揺れはあるので乗り物酔いのあるかたには南風号は大変そうです。foxryo的には振り子列車の特急「しらさぎ」とか、島根にいくときに北上する特急(名前を忘れました)の方が苦手です。
さてさて、高知でのランチは別府さんご夫妻と、「OSTERIA BIBERE」(オステリアビベール)へ。
イタリアンのお店ですが、「お肉がいいよね」とメインはパスタをパスw サラダは、文旦とキュウリ! ぶんたんは、フカフカのあまかわ(?)もちょっとついていました。昔、あの熊本の超でっかいなんとか柑のフカフカの砂糖漬けを作ってみたのを思い出しました。フカフカには柑橘の甘みと酸味がふんわり香って、生でもいけることに驚きました。南国土佐の土地の食材を活かしたお料理をいただけるってステキです。
食後のドリンクに抹茶のクッキーがついていてこれが抹茶が濃くて甘さ控えめ。
14時からの講演の前にとてもゆったり、ステキなお料理と楽しいお話で時間を過ごせました。ご馳走様でした!
☆OSTERIA BIBERE URL:http://sp.raqmo.com/osteriabibere/
住所:高知市はりまや町2-5-1 フローラはりまや町102号 火曜定休
夜ご飯は、高知駅でお弁当を買って電車の中で食べ、岡山駅では、オヤツを買っていただきました♪
生もみじまんじうの抹茶味、モチモチで気に入りました♪
家に着いたのは0:20頃。午前様になりましたが、とっても濃くて心地よい一日でした。
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